Research Project
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
Band3のアニオン透過機能は、膜貫通ドメイン(MD)がアニオンを認識して内向き型/外向き型の状態を往復するというダイナミックな構造変化によって実現されると考えられている。しかし、これまでBand3 MDの立体構造解析は20Åの分解能までしかなされておらず、原子レベルの構造解明には至っていない。本研究は外向き型/内向き型Band3MDの構造を二次元結晶化及び電子線結晶学に基づいて解き、これらを比較することによってアニオン透過機構の全容解明を目的とした。外向き型(H_2-DIDS結合型)Band3MDの二次元結晶化において、これまで行っていたカチオン性界面活性剤DTACによる結晶融合や、L-Lysineによる結晶成長促進ではシート状結晶が得られたが、それはモザイク状(小単位の結晶が一面に存在)であるため分解能が低く、また形成頻度が非常に低かった。それに対し、今回見出した、リン脂質にDOPC (LPR=0.28)を、界面活性剤に0.1%C_<12>E_8を用い、組成が10mM Tris (pH9.0)、20mM NaCl、0.1mM SrCl_2、10mM Na_4P_2O_7、0.02%NaN_3の外液に対して20℃で透析を行うという二次元結晶化条件では、これまでのシート状結晶より高い分解能(30Å)を示すチューブ状結晶が観察された。さらに形成頻度も極低温電子顕微鏡による観察が可能な程度にまで改善した。現在のチューブ状結晶は直径が大きいため、電子顕微鏡用試料作成の際に結晶がくずれていると考えられる。したがって、直径が小さくなるか、破れてシート状結晶になることで大幅に分解能が向上すると推測される。