Budget Amount *help |
¥7,500,000 (Direct Cost: ¥7,500,000)
Fiscal Year 2006: ¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
Fiscal Year 2005: ¥5,000,000 (Direct Cost: ¥5,000,000)
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Research Abstract |
遺伝子,環境因子に次いで生物の多様性を位置づける要因としてエピジェネティクスが近年注目されている.ゲノムDNA様々な遣伝子座が,細胞の種類により特異的にメチル化されていることに関連し,これまで我々が明らかにしてきたヒト性分化異常症における精巣化遺伝子SRYならびにX染色体のモザイク発症機構と性分化異常との関係(性染色体遺伝子量補償機構の破綻)の解明を目的とした.北海道大学医学部産婦人科および小児科でfollow-upししている臨床および細胞遣伝学的に性分化異常症が疑われた20症例を対象に,本研究に対するインフォームドコンセントを得た上で,詳細な細胞遺伝学的解析を行い,さらに性分化関連遺伝子および座位の有無の検討を行った.遺伝子の欠失を認めない症例についてはゲノムDNAをPCR法により増幅し,エクソン,イントロン各部位の塩基配列を直接決定し,点突然変異などの異常の有無の有無を解析した.また,臨床的多型性を適伝子レベルでの異常と対応させ検討した.家系解析として,PCR-RFLP, PCR-SSCPおよびPCR-CFLP法を取り入れることにより,迅速かつ大量に遺伝子試料の多型点突然変異の解析を行った.また,Y染色体の構造異常の認められた症例では,患者より性腺および皮膚を採取,培養後,bisulfite sequencing法によるSRY, AR, SLARおよびCox-2のDNAメチル化解析ならびにクロマチン構造とヒストンアセチル化についてSRY座位を含むY染色体短腕末端から長腕末端までのChromatin Immunoprecipitation (ChIP) Assayを行った. その結果,性分化異常症患者の「性の決定・分化機構」の破綻には,SRY遺伝子のCpG islandにおけるDNAメチル化抑制,およびSRYプロモーター&HMG BOXのヒストンアセチル化によりSRY mRNAの異常発現が関与していることを見いだした.これらの性分化異常症患者ではSRYの細識限定発現部位・時期に異常がみられ,また,高率に45.X核型とのモザイクが関連することから,当初,「モザイクなどの細胞数の単純な減少に伴うSRYの遣伝子量の減少」が関与していると想定していたが,実は,発生初期より『SRY遺伝子の高濃度持続発現』が起こり,その結果,未分化性腺から精巣への発生・分化スイッチに障害が起こり,基本型である雌型に分化(卵巣化)したと考えられた.このことは,性分化異常症患者の染色体異常は,性分化異常の原因ではなく,患者は元々エピジェネティクス(クロマチン)異常等の素因があり,その結果,染色体異常が引き起こされたとも想定され,性分化異常症発症機構に関し,新たな研究の展開が期待される.
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