Budget Amount *help |
¥3,400,000 (Direct Cost: ¥3,400,000)
Fiscal Year 2007: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2006: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2005: ¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
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Research Abstract |
ダイオキシン(TCDD)は内分泌撹乱作用を持った化学物質として知られ,ヒトを含む生物の多方面への影響が懸念されている.そこで,TCDDの妊娠・出産期への曝露と老化・寿命,さらには,老化期での行動との関係を明らかにする目的で,外部からの刺激に一番敏感だと考えられている周生期のみにTCDDを曝露したラットを継続飼育し,寿命について検討した.また,迷路実験と脳組織の形態学的変化の観察を組み合わせて行い,TCDDの周生期曝露が老化期での認識や学習,情動といった行動に与える影響についても解析した.TCDD曝露により,ラットでは雄雌ともに約10%の平均寿命の短縮が認められ,また,外部形態の異常も頻出した.このことは,TCDDの周生期での微細な影響がそのままずっと維持され,成長,成熟期を経て,多くの防御機構が弱体化する老化期になって表面化したと考えられる.また,TCDDの周生期曝露ラットでは,老化すると脳の線条体,海馬,扁桃体において,神経細胞数の減少や神経細胞の配列の不規則化といった形態学的変異が認められた.一方,ラットのオープンフィールド実験や迷路実験において,認識や学習機能の低下,および,情動異常といった行動変化も確認され,脳構造の変異が行動異常と関連しているかもしれないという知見が得られた.以上の結果より,TCDDは動物に明らかな障害を与えるような重篤な量でなくとも,動物の一生の中で最も脆弱な発生期においては,体内の細胞に作用し正常な組織や器官の形成を妨げ,その微少な影響が成長,成熟期から老化期までずっと維持し続け,そのため,平均寿命の短縮や老化期での行動異常を引き起こしている可能性が示唆される.
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