Research Project
Grant-in-Aid for Exploratory Research
近代日本美術史は西洋とのさまざまな交流関係を抜きにしては成り立たない。したがって来日した著名な画家、収集家等の証言はこれまでも美術史研究に参照されてきたが、本研究で対象とする文献は日本国内で発行されながら、従来等閑に付されてきた異質な美術言説である。すなわち、その言説とは、1928(昭和3)年から発行された英文版日本美術年鑑Year Book of Japanese Arts(国際連盟協会学術協力委員会発行)と英字新聞(Japan Times&Mail)であり、このような英語による美術言説が大正末から昭和戦前期の美術史にどのように反映しているかを検証するのが本研究の目的である。これまで専門的な論文で取り上げられていない英文版日本美術年鑑と東京朝日新聞社から刊行された「日本美術年鑑」を比較する研究を行ってみると、団伊能編集主幹による英文版が基本的には日本語版の構成を踏襲するものであることが解る。ただし、各年度においては1927(昭和2)年開催の「明治大正名作展」をはじめとして主要な展覧会の紹介が大きな違いとして特筆される。また、英文版日本美術年鑑は国際連盟の成立と関わりの深い学術協力委員会の国内委員会が発行したものであるが、その活動は美術雑誌で紹介された事実が確認され、美術界では認知されていたことも見逃せない事実である。当時とくに西洋美術に通じた美術批評家がどのように海外文献を利用したかを含めて、今後さらに近代美術における英文ジャーナリズムの影響力を検討する余地がある。
All 2006
All Journal Article (2 results)
ユリイカ 38・11
Pages: 296-303
アジアのキュビスム