Research Project
Grant-in-Aid for Exploratory Research
昨年度までの研究を通じて明らかになったのは、習熟度別指導の「効果」は、それだけを取り出して測定・評価することがきわめて困難であるという事実であった。言葉をかえるなら、習熟度別指導をとったからと言って、直ちに子どもたちの学力が向上するわけでもないし、逆に、習熟度別指導をとらなくても学力が向上するとは、これまた言いにくいということであるまた、この言えるだろう。すなわち、習熟度別指導の効果は、それがどのような学校風土、教育活動上のコンテクストに位置づいているかに依存すると。そこで本年度は、そうした観点に立ち、「効果のある学校」論の視点から「いい学校」だと思われる小中学校を合わせて10校、平成18年度の大阪府学力実態調査の対象校から抽出し、それらの学校における習熟度別指導の状況を質的に掘り下げるという作業を行った。その調査活動の全体的な成果は、『子どもの笑顔が生まれる学校改善のためのガイドライン』(大阪府教育委員会)という冊子にまとめられている。習熟度別指導についての結論を端的に言うなら、学力保障についての全校的な方針のもとで、子どもたちの基礎学力の底上げを組織的に図っているタイプの学校では、それは非常にうまく機能する傾向が強いというものである。逆に、そのような前公的方針、あるいは一貫した指導体制の整備されていない状況下では、習熟度別指導の機械的導入ははかばかしい成果を生み出すことは少ないという事実が見いだされたと言える。