Research Project
Grant-in-Aid for Exploratory Research
terpyridine(terpy)は適当な金属イオンとの結合によりそのコンフォメーションが変化し、構造の自由度が著しく制限される。本研究では、terpyを基体とするアミダイト試薬を合成した。これを利用すると骨格中にterpyを組み込んだ、DNA、およびRNAを自動合成装置内で容易に合成することができる。オリゴデオキシヌクレオチド骨格中にterpyを組み込んだ幾つかのDNAコンジュゲート合成した。このコンジュゲートの二本鎖形成、および三本鎖形成に及ぼす金属イオンの効果を検討した。二本鎖中にterpyを導入した場合には金属イオン、特にNi^<2+>共存下、二本鎖構造が大きく安定化することが確認された。金属イオンとの錯生成により、terpyがより固い構造となり、エントロピー的に安定化した結果と考えられる。一方、三本鎖形成に関してはパラレルモチーフの2つのピリミジン鎖を結ぶループ部位にterpyを導入したものについて検討した。興味深いことに、この系では金属イオンにより三本鎖が著しく不安定化することが明らかになった。すなわち、Cu^<2+>共存下、融解温度にして約14℃、結合定数にして1/1000の不安定化であった。コンピュータシミュレーションなどの構造解析の結果、用いたterpy骨格はそのトランス状態でリンカーを含めた長さが三本鎖の直径とほぼ等しく、また芳香族のスタッキングの効果も加わって理想的なループとして振る舞うが、金属イオンとの錯生成によりcis型となり全体の長さが4-5Å短くなることがわかった。錯生成によりループ近傍の構造には歪みが誘起され、塩基間の水素結合、スタッキングを著しく乱すためであろうと考えている。同じ構造でありながら導入する箇所の違いにより構造の安定性を高めたり低めたりすることが可能であることがわかり、これは今後の機能性核酸への導入に向けて非常に貴重な知見となる。
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