Research Project
Grant-in-Aid for Exploratory Research
本研究は、昆虫の食欲中枢調節機構を遺伝子レベルで明らかにすることを究極の目標に据えている。その為に、研究材料には、共にヤガ科に属するアワヨトウ、ハスモンヨトウ幼虫を用いた。理由は、この2種の鱗翅目昆虫に寄生する各々の寄生バチ(アワヨトウに寄生するカリヤコマユバチ、ハスモンヨトウに寄生するCotesia manilae)が知られ、共に近縁種であるにも拘わらず、寄生後の両宿主幼虫成長速度に大きな違いが生じ、この主要因が寄生に伴う食欲の変化によるものであることが確認できたからである。寄生後ほとんど食欲を失う宿主ハスモンヨトウ幼虫、さらに、寄生されても食欲を維持し続ける宿主アワヨトウ幼虫である。前年度の研究により、ハスモンヨトウは寄生後1日目から2日目にかけて顕著に食欲を失うことが明らかになったので、寄生後2日目の幼虫と同じ日齢の未寄生幼虫(コントロール幼虫)から脳を摘出し、そこからtotalRNAを抽出した。このtotalRNAからcDNAを合成し、それを鋳型にディッフェレンシャルディスプレイ法を用いて、両者の間で異なる発現量を示すmRNAを探索した。その結果、寄生後mRNA発現量が顕著に上昇する遺伝子が1種類同定でき、その全長の塩基配列を決定した。全長が516bpで、360bp(120アミノ酸残基)ORFのアミノ末端には20アミノ酸残基からなるシグナルペプチド領域が存在していた。したがって、この遺伝子産物は分泌性のタンパク質と予想される。また、その発現は中枢神経が最も高く,次いで、血球細胞が高い発現量を示していた。また、この遺伝子は後腸を結紮し顕著に食欲を失った幼虫脳内でも、この遺伝子の発現上昇が観察された。さらに、48時間絶食状態にして食欲を高めた幼虫脳内では遺伝子発現の低下が観察された。ただ、今回、ハスモンヨトウで同定されたこの遺伝子は、現在のところアワヨトウ幼虫脳cDNAsを鋳型に用いたPCRによって増幅されておらず、今後、他の手法でオーソロ遺伝子を同定する必要がある。
All 2007 2006 2005
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