Research Project
Grant-in-Aid for Exploratory Research
研究代表者はかつて内科臨床医として勤務していたが、平成8年当時、当該患者およびその家族に、先天性眼振とその原因として蓋然性が高い第3、第4染色体間の転座を確認していた。本研究は転座部位を詳細に検討することにより、眼振関連遺伝子を同定しようとするものである。研究には患者血液の確保が必要であるため、現在も患者が継続通院している医療機関を通して、患者さんへの研究協力要請を行った。本研究の医学的意義や倫理的問題、個人情報の問題等を患者と面接の上で十分に説明した後、患者さんから血液提供を受けることができた。提供された血液は3分割し、染色体標本およびDNA標本の作製とEBウイルスによる株化を行った。染色体標本については、約10年前にはGバンド法による核型解析しか実施されていなかったため、今回染色体ペインティングプローブを用いることにより、第3、第4染色体間の転座を改めて確認した。同時にGバンド法での核型解析も再施行し、切断点を3q25および4q31.2-q31.3付近と決定した。これらの観察に基づき、FISH法による転座点の絞り込みを計画。予想切断点周囲のBACクローンを購入し、FISHプローブ作成用のDNAを回収した。今後は作製した染色体標本でFISH法を行い、転座点をさらに狭めていく予定である。また整備が進みつつあるゲノムや遺伝子に関するデータベースを利用した原因遺伝子の探索も試みている。これまでの報告に基づいて原因候補遺伝子を選定し、欠失などの大きな変異の有無を検討しているが、現時点では明らかな異常を同定していない。本研究は、現時点においては端緒についたばかりであるが、材料や方法などは整備されつつあり、来年度中には転座点を決定したいと考えている。