Research Project
Grant-in-Aid for Exploratory Research
本研究は新規薬剤耐性遺伝子MRP4の非小細胞肺癌における意義を検討し、これを標的とした新しい肺癌の分子標的治療を開発することにある。これまでの検討で、MRP4は抗癌剤をはじめとする各種薬剤の薬剤耐性遺伝子として機能する一方で、癌化とともにその発現が低下するために腫瘍抑制遺伝子としても機能することが示唆されてきた。そこで平成18年度には非小細胞肺癌におけるMRP4の発現の意義を明らかにするために以下の基礎的・臨床的検討を行なった。1 平成17年度に行なった野生型マウスでの各種臓器でのMPR4遺伝子発現を定量的検討により、脾臓・精巣と並んで肺におけるMPR4の発現が非常に高く、これら臓器での細胞内抗癌剤(CPT-11など)濃度は有意に低値であることが判明した。またMPR4ノックアウトマウスでは肺を含む各種臓器でのMPR4発現消失とともに抗癌剤の細胞内濃度が著明に上昇したこと、in vitro実験でMPR4がCPT-11を細胞外に排出することにより肺癌の薬剤耐性に関与していることも確認した。このことから肺癌切除標本におけるMRP4発現の検討を行なったが、有意な知見は得られなかった。このことは肺癌の生物学的多様性を反映しているものと考えられ、肺癌の薬剤耐性の機序はMPR4にのみ起因するものではないことが示唆された。2 非小細胞肺癌組織でのMRP4発現を定量的に検討すると、プレリミナリーな検討では正常肺部分と比べて癌部では有意に低下し、また癌の進行とともにその発現低下が見られた。これらの結果はMPR4が肺癌においても癌抑制遺伝子として作用している可能性を示唆しており、非小細胞肺癌株を用いてin vitroでの浸潤能やin vivoでの腫瘍増殖や転移能と、これら細胞株でのMPR4発現の相関を現在検討を行なったが、MPR4発現と癌の悪性度の間には明らかな相関を認めなかった。
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