Research Project
Grant-in-Aid for Exploratory Research
組織や細胞の個性や可塑性は、塩基配列の変化を伴わずに遺伝子の発現を活性化したり不活性化したりする後生的修飾(エピジェネティクス)によって決定されている。本研究は、核マトリクス結合タンパク質(ARID3)のノックダウンとDNA脱メチル化剤などを併用することにより、体細胞核を人為的に再プログラミングさせることを目指して研究をおこなった。本年度の実績は以下の通りである。昨年度まで解析で、siRNAを用いたARID3ファミリータンパク質の発現抑制(ノックダウン)によって、核染色によるクロマチン構造の変化が認められること、重要な核内構造の一つであるPML核ボディの機能が著しく抑制されることを見出している。より詳細な解析のため、導入効率に優れたshRNAを発現するアデノウイルスベクターを作成し検討をおこなったが、ARID3の十分なノックダウン効果が得られなかった。原因として、ARID3タンパク質が非常に安定なタンパク質で半減期が長いことが考えられた。体細胞核を人為的に再プログラミングさせるために必要と思われる期間、内在性ARID3の発現を抑制するため、現在、長期間の発現に優れたレンチウイルスベクターに使用するベクターを変更して解析をおこなっている一方、本研究の遂行過程で、癌抑制遺伝子p53の制御におけるARID3の機能について多くの新たな知見を得た。DNA障害で誘導された内在性p53が内在性ARID3と結合することを見出し、p53とARID3がin vitroで直接結合する知見を得た。さらに代表的なp53標的遺伝子の一つであるp21遺伝子プロモーターに存在するARID3結合配列あるいはp53結合配列のどちらに変異を導入してもプロモーターの活性化が著しく低下することを見出した。以上の結果から、ARID3が重要な癌抑制遺伝子の一つであるp53の転写制御において重要な役割を担っていることが明らかとなった。
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http://ikeda-emb-tmd.hp.infoseek.co.jp/index.html