Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
超新星残骸や活動銀河核、ブラックホール近傍の降着円盤など、宇宙にはMeVからGeVをさらに超えるような高エネルギー現象が普遍的に存在する。そこで加速された粒子や、放出された高いエネルギーの光子は、電磁相互作用や強い相互作用を介して電子陽電子を対生成することが可能であり、その帰結として放出される陽電子と電子の対消滅線を高い感度で観測することが出来れば、こうした高エネルギー現象の加速のまさに現場における物理情報を得ることが可能になる。本研究では、このために2005年に打ち上げられた「すざく」衛星に搭載される硬X線検出器(HXD)を用いた天体観測と、HXDを超える、さらに高感度な対消滅線検出器の開発を目的としている。今年度は、昨年度に引き続きすざく衛星搭載硬X線検出器(HXD)の軌道上較正試験と、それを用いた銀河中心領域の観測を進めた。すざく衛星は軌道に投入されてから3年目を迎えるが、その間、HXDの全センサは正常動作を続けている。また、エネルギー較正、応答関数の構築、バックグラウンドのモデル化を進めたことで、HXDの性能をフルに引き出すことに成功し、特にバックグラウンドのモデル化による再現精度は数%という高いレベルを達成することが出来た。これにより、低バックグラウンドを活かした天体観測を実現することが可能となった。本研究の目的である電子陽電子対消滅線の検出が特に期待される、銀河系中心領域に対しては、2年間の公募観測期間の合計で、約1ケ月相当の観測を実施した。このデータを用いて、軟X線領域で卓越する熱的放射成分の他に、銀河中心の広がった領域から、非熱的放射を検出することに成功し、投稿論文にまとめた。また、HXDを凌ぐ高感度の検出器を開発するため、陽極間隔が3mmという優れた性能を持つ位置検出型光電子増倍管と、対消滅線に対するエネルギー分解能が約3%という、かつてない高い分解能を持った無機結晶シンチレーター(LaBr3)のアレイを組み合わせた、撮像型検出器を試作し、位置分解能3mm、かつ、エネルギー分解能5%という性能を達成することが出来た。この検出器をさらに改良し、次世代の衛星搭載用標準規格であるSpaceWireのインターフェースに対応させることで、衛星搭載用検出器のプロトタイプを製作した。これらの成果については国際学会にて発表を行った。
All 2008 2007 2005
All Journal Article (5 results)
Publication of the Astronomical Society of Japan Vol60 SP1
Pages: 207-222
10023956331
Publication of the Astromical Society of Japan Vol60 SP1
Pages: 153-162
10023956055
Publication of the Astronomical Society of Japan Vol.59 SP1
Pages: 53-76
IEEE Transactions on Nuclear Science 52
Pages: 2052-2057
Pages: 1836-1841