Budget Amount *help |
¥3,600,000 (Direct Cost: ¥3,600,000)
Fiscal Year 2006: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2005: ¥2,900,000 (Direct Cost: ¥2,900,000)
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Research Abstract |
近年,絵画や工芸品,建築物といった(有形)文化財の多くは,長期に渡る直射日光や湿気をはじめとする環境的要因によって既に劣化しており,色彩や形状は損傷した状態で保存されている.本研究では,こうした重要な文化財を保存しようとするデジタルアーカイブの研究の拡張として,可動式プロジェクタで色修復に必要な投影光を文化財に照射し,文化財の状態を損なうこと無く,作業の困難な色修復を仮想的に実現した. まず,搬送車ロボットの上にプロジェクタとカメラを設置し,コンピュータで自動算出した修復像を適切な位置から照射する色修復システムを構築した.このシステムは,液晶ミラーをハーフミラーとして文化財の全方位に設置してあり,プロジェクト光の照射率を制御することになる.そのため,従来手法で問題とされる分光反射率の低い実物体に対してもプロジェクタの効果を十分に発揮することができ,利用者の要望に忠実な色再現を実現することができた. 本年度は,マルチプロジェクション,ユーザインタフェースを実装,更に,実物体に対する提案システムの評価として,具体的に以下のことを実施した. (i)マルチプロジェクションシステムへの拡張 17年度に実装した試作システムは,固定した1台のカメラとプロジェクタによる色修復システムであったが,今年度は,カメラとプロジェクタを搬送ロボットに設置した2組の可動式システムに拡張し,マルチプロジェクションによる色修復システムを実現した.まず,天井に設置したカメラで環境情報を取得し,搬送ロボットが投影する位置を算出した.この際,環境変化への対応や投影位置の補正を可能にするために,搬送ロボットの通信制御についても実装した. (ii)修復情報(色・箇所)を選定する効果的なユーザインタフェースの設計・実装. プロジェクタで色修復に必要なメニューを液晶ミラーに投影し,利用者がこのメニューを選定するシーンをカメラで撮像することで修復領域と修復色を決定した. (iii)色再現性および利用者によるシステム評価. 色修復システムを用いて文化財に対する色再現性を求め,さらに,色修復作業における本システムの効果を利用者に評価してもらった. 昨年度の試作システムに加えて本年度の研究遂行により,対象物体の質感を損なうことなく,修復色を再現することができるという結果を得た.本システムは,絵画や建築物などの文化財には直接手を触れることや時間に依存することなく,劣化する以前の色情報を提示できることが特徴であり,今後,実際の博物館や美術館などでバーチャルミュージアムとして利用されることが期待できる.
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