Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
2007年度は、(1)選択的中絶に見る個人的優生主義、(2)戦前期日本における母性フェミニズムと優生主義との親和性、(3)フランスにおける生殖補助医療によって出生した「子ども」の権利の確保、の3点を軸に調査を進めた。個人的優生主義は、選択的中絶を容認する根拠の一つとしての社会における障害者の受け入れの不備と偏見だけにとどまらず、「社会」の価値基準の変化をもたらしうる特定の人々の価値および規範意識をも反映する。そして、自己決定という原則のもとでの個人的優生主義の容認は、特定の社会グループの価値観に基づく、望ましくないとされる特質を持った人々へのスティグマの付与とこれに伴う社会的排除、および社会的な序列の強化にもなりうる。この点に関しては、応用倫理国際カンファレンス(北海道大学、2007年11月22-25日)において報告した。日本の戦前期フェミニズムもまた、社会改良の目的のもと、母性保護と私生児の出生防止を目的として、貧困層に対する生殖の制限を容認する傾向にあった。優生主義は、政府の優生政策のみならず、困難な状態にある人々の社会的排除の可能性を持った当時のフェミニズムに対しても理論的根拠を提供した。この点に関しては、国際臨床生命倫理学会(2007年9月14-15日開催)で報告した。ところで、フランス生殖補助医療では、匿名出産によって出生した「子ども」の「自らの出自を知る権利」がクローズアップされるにつれ、匿名性の原則についても再考を促す声が出始めている。匿名出産および生殖補助医療によって出生した「子ども」の「出自を知る権利」は、「子ども」自身の自己尊重とこれに基づく他者との関係の形成の基盤となるがゆえに確保されなければならない。これについては、「『子どもへの権利』は『子どもの権利』に優越するか-フランスにおける『自分のルーツを知る権利-』」(『医療・生命と倫理・社会』第7号)にまとめた。
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医療・生命と倫理・社会 第7巻1-2号
Pages: 86-98
120004847062
Proceedings: Applied ethics: the second international conference in Sapporo
Pages: 248-255
120005303334
倫理学年報 第56集
Pages: 185-199
40015336214
同志社大学ヒューマン・セキュリティ研究センター年報 第3号
Pages: 376-380
現代社会研究 第9号
Pages: 79-91
120005303311