ロシア文化史のコンテクストにおけるミハイル・バフチンの記号概念の再検討
Project/Area Number |
17720044
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
ヨーロッパ語系文学
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
番場 俊 Niigata University, 人文社会・教育科学系, 准教授 (90303099)
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Project Period (FY) |
2005 – 2007
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2007)
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Budget Amount *help |
¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 2007: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2006: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2005: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | バフチン / 記号論 / ドストエフスキー / ヤンポリスキー / マレーヴィチ / 大改革 / 心理学 / 反遠近法 / ジャーナリズム / 受肉 / アケイロポイエトス / 写真 / 告白 / 司法改革 / 小説 / ロシア / ロシア・アヴァンギャルド |
Research Abstract |
研究の最終年度である本年度は、バフチンの記号概念を19-20世紀のロシア文化史のコンテクストのなかに位置づけるために、以下の研究をおこなった。 1 9月12日-19日にモスクワのロシア国立図書館で調査をおこない、1864年の司法制度改革とそのインパクトに関わる資料、および19世紀後半-20世紀初めにおける心理学/司法制度/芸術の交錯に関わる資料を収集し、検討した。そこで明らかになったことは、バフチンの記号概念の最大の源泉であったドストエフスキーのテクストが、19世紀後半-20世紀初めの法の言説や心理学的・生理学的言説(裁判における自白の取り扱い、情状酌量の理論ほか)と骨がらみになっており、ドストエフスキーの小説を「声一意識」のポリフォニーという人格主義的用語で記述しようとするバフチンの志向とのあいだに、ある種の齟齬が見られるという事実である。 2 ドストエフスキーの小説における「パースペクティヴを欠く視点」という概念をバフチンから取り出して発展させた現代の批評家であるミハイル・ヤンポリスキーのテクストを、ヤンポリスキーの邦訳者(乗松亨平氏)、映画史・視覚文化史の研究者(北野圭介氏)とともに検討した成果を刊行した。 3 20世紀初めのロシアの画家であり、バフチンとも交流があったカジミール・マレーヴィチの絵画と著作を、中世のイコンにはじまる反遠近法の美術史の流れのなかに位置づけ、マレーヴィチのシュプレマティズムが19世紀末-20世紀初めの心理学・生理学の言説と交錯することを明らかにする論文をまとめた(2008年5月刊行予定)。ルネサンス的遠近法に対する批判、記号の「受肉」への強い志向といった主題はマレーヴィチとバフチンに共通して見られるものであり、これによって、バフチンの記号概念を、20世紀前半のロシア文化史というコンテクストのなかで多面的に捉えることが可能になった。
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Report
(3 results)
Research Products
(5 results)