Project/Area Number |
17720077
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Linguistics
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小川 芳樹 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 助教授 (20322977)
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Project Period (FY) |
2005 – 2006
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2006)
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Budget Amount *help |
¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2006: ¥300,000 (Direct Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2005: ¥300,000 (Direct Cost: ¥300,000)
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Keywords | テンス(時制) / アスペクト(相) / 補文標識 / 普遍文法 / 日本語統語論 / 統語と意味のインターフェイス / フェイズ / 日英語比較統語論 |
Research Abstract |
「テンス(時制)」と「アスペクト(相)」はともに時間に関わる言語表現であるが、アスペクトが、主に動詞の語彙的意味と連動して動詞句が表す事象(event)の性質(完了、継続等)を決定するのに対して、テンスは、動詞句が表す事象が時間軸上のどの点で起こるものであるか(過去、非過去等)を決定するという差がある。統語的にも、アスペクトを表す機能範疇(Aspect)は、動詞句を選択し、動詞の目的語の性質と連動するのに対して、テンスを表す機能範疇(Tense)は、その指定部に文の主語を選択し、文の発話内の力(illocutionary force)を決定する機能範疇である補文標識(Comp ; C)によって選択されるので、主語および補文標識の性質と連動するという差がある。 テンスとアスペクトの間の、このような差異を踏まえ、「平成18年度の研究成果」に記した論文では、生成文法理論の見地から、日本語の補文内からの長距離A移動の可否を、補文のテンスおよび補文標識の統語的性質に還元する説明を提案した。具体的には、「主語繰り上げ(Subject Raising)構文においては、補文のテンスが主節のテンスと同時の解釈を受けるときのみ、その主語が節境界(CP)を越えて長距離A移動できる」「かき混ぜ(Scrambling)構文においては、補文主語が音形のない名詞句であるときのみ、補文目的語が節境界を越えて長距離A移動できる」という、従来から知られている2つの一般化に対して、「補文のCが主節のVへ編入したとき、補文のTP指定部を占める名詞句が当該のVの指定部へA移動できる」という仮説に基づく統一的説明を与えた。 節境界を越えるA移動の可否に関する事実は、従来、テンスがもつ意味素性の観点からフェイズ(phase)としてのCPを2種類にタイプ分けすることで説明されていたが、本研究は、この従来の説明に内在する問題点を解決し、当該の事実に対して、「CPは常にフェイズである」というより単純で理論的に望ましい仮説と、「補文のCが主節のVへ編入する場合がある」という補助仮説のもとで、純粋に統語的な説明を与えたものである。
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