Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究は、カウンセリング場面において専門家とクライアントが互いの発話をどのように解釈し、その結果として相互行為の展開にどのような影響が現れるのかを解明することを目指している。特に、1)専門家がクライアント自身の体験や感情の語りについての解釈をどのように自分の発話に反映させ、そのことがその後の相互行為の展開をどのように方向付けるかを実証的に検証し、2)そうしたカウンセリングの協同構築という活動のうちに埋め込まれた様々なレベルの「制度性」を洗い出すこと、この2っを目的とする。本年度は、すでに収録している婦人科の医療的カウンセリング場面の分析、および、教育用ビデオ教材として収録された実際の心理面接場面の分析を中心に研究を進めた。前者については、専ら医療者のための記録として診療中に書き込まれるカルテなどの記録媒体が、注視や指差しなどの動作によって、患者の語りによって提供された情報を構造化し協同的に利用するための資源として相互行為の組織に組み込まれ、カウンセリング活動の展開に決定的な役割を果たしていることを明らかにした。また、患者の過去の拒食症の経験が、このカウンセリング場面に導入され、中心的なトピックとなり、最終的に、「心の問題」と現在の身体症状とが結び付けられていく過程を詳細に分析した。後者については、カウンセラーが、クライアントの語りの合間に、聞き手の反応として「うん」と「はい」を多用することに注目し、「はい」がどのような箇所で用いられているのかを相互行為の視点から明らかにした。年度後半には、助産院における新生児健診場面において、新生児の母親が助産師や医師に対して新生児の健康状態や育児について相談をする場面をビデオ収録した。現在このデータの整理・文字化・分析を進めている。
All 2008 2007
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社会言語科学 10(2)
Pages: 55-69