Budget Amount *help |
¥2,800,000 (Direct Cost: ¥2,800,000)
Fiscal Year 2006: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 2005: ¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
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Research Abstract |
本研究では,観光という場に注目することで,日本諸工芸(具体的な対象は陶磁器)の近代以降の文化的諸展開を把握することを目的とするが,本年度は,その基本的作業として,1,第1の資料である観光ガイドブックにおける陶磁器の記載状況を確認(今後も継続),2,観光ガイドブック自体の変遷を考察,3,近代期の陶磁器業の概況について調査,4,いくつかの陶器産地について現地調査も含む概況調査,5,これらを元にしたデータベースの作成(一部のみ),を行った。 以上の作業の中から次のような知見と今後の課題を得た。1,筆者の既存研究で考察したことと同様であるが,陶磁器のガイドブックへの掲載過程を分析すると,(1)権威ある産地のみの掲載期,(2)ガイドブックの質的充実にともなって既存産地が詳述されていく時期,(3)新たに開窯された産地が掲載される時期が,特徴的に把握できる。これらは,それぞれ近代期の殖産興業,1930年代および50-60年代の旅行熱の高まり,1960-70年代のやきものブームなど,社会的状況を敏感に反映している。資料の充実とともに,それら社会状況との関わりをさらに深く考えることが,次年度以降の第一の課題として生じた。2,近代期の窯業界を考察すると,明治後期から大正期に芸術家として活動をする陶芸家が生まれてくる。これらは現在では,重要無形文化財保持者(人間国宝)などとして,地域の工芸をアピールする際に際だった存在となっているが,その初期においてはむしろ,地域から自らを切り離すことで芸術的価値を高める方向がみられた。第二の課題として,これらが現在のように地域の観光資源として活用されるようになるプロセスを考えることがあげられる。地域工芸の持つ芸術性の問題は本研究における重要な課題である。近年盛んな地域におけるアーツマネジメントとも関わらせながら考察を深めたい。
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