Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究では、(1)フランスにおける手続的アプローチ(「法の手続化」理論)の理論的基盤・具体的手法・社会的影響、(2)アメリカにおける構造的アプローチの理論的基盤・具体的手法・社会的影響を明らかにしながら、(3)フランスとアメリカのアプローチを比較分析し「手続的・構造的アプローチ」の融合的研究を行った。さらに、これらの研究を踏まえながら、(4)このアプローチが日本の社会や労働法制のあり方に与える意味を考察し、日本における「手続的・構造的アプローチ」理論の構築を図ることを試みた。(1)〜(3)の比較研究からは、フランスの手続的アプローチとアメリカの構造的アプローチは、その理論的基盤を異にするものであるが、その背景・手法・社会的影響の点で共通する特徴を多くもっていること、さらに、両者は相互に排他的なものではなく、むしろ両者を相互補完的に融合させながら1つのモデルを構築することが可能であることが明らかになった。これらを融合させた新たな法システムのモデルを端的にいえば、「公正」で「効率的」な社会を当事者の「参加(集団的なコミュニケーション)」によって実現しようとするものということができる。このモデル牽もとに、日本における新たな労働法システムのあり方(手続的・構造的アプローチの具体化)も提示された。この具体化にあたって特に日本で問題となるのは、日本の伝統的な労使関係に内在してきた閉鎖性・非民主性である。社会の多様化・複雑化に対応しうる新たな労働法システムを構築するときには、その基盤となる「集団的コミュニケーション」が開放的で透明なものであることが求められる。本研究の成果を集約したものとして『労働法』(有斐閣、2007年)、同〔第2版〕(有斐閣、2008年)が公刊されたが、そのなかで示された具体的な解釈論・立法論のなかには、これらの視点や留意点が盛り込まれている。
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