Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究は、犯罪の時系列的発展段階とその完成形態につき、各犯罪における法益の侵害構造及び既遂結果発生の危険の発生と消滅とに着目しつつ、比較法的視座から理論的実践的に考察を及ぼすことを目的としている。平成17年度より取り組んできた調査及び比較法的理論分析の結果、日本の未遂論は、犯罪の結果を発生させることのないよう、当初の行為意思とは逆に、既遂を阻止しようとする意思に基づく中止行為がある場合、これを可罰的な未遂の概念に含めないフランス刑法の系譜と、自己の意思による中止行為の有無とは無関係に、結果の不発生そのものを可罰的未遂の要件とするドイツ刑法の構想との双方に影響を受けつつ理論的発展を遂げてきたことが判明した。さらに、昨年度は、法規定において行為者の主観を基準とすることを明定するドイツ、逆にむしろ客観的事実に基づいて未遂を構成しようとするイタリア、日本とは異なり、犯罪の客観的要素と主観的要素を体系的に区分して考察するフランス、並びに大陸法とは異なる未遂概念をもつイギリス等諸外国の資料の検討を通じて、未遂と既遂との共通の要素と解される故意の内容について、行為の発展段階に即して、結果発生の認識、意欲が必要とされるか、またどの程度必要とされるかについて、考察を加え、その一部の公表を始めている(金澤真理「構成要件の段階的充足と故意の帰属(一)山形大学法政論叢40号1頁)。さらに、未遂犯と類似の構造をもつとされる、目的犯の目的についても検討した(金澤真理「行為の目的と犯罪の動機」山形大学法政論叢41・42号掲載予定)。本研究は、従来、学説において個別に検討されてきた予備、未遂、既遂を構成要件的構造を手がかりとして、犯罪の時系列的発展段階に即して考察するものであり、結果発生の危険とその認識に関する検討は、同様の犯罪構造をもつ危険犯の研究にも有用なものと考えられる。
All 2007 2006
All Journal Article (2 results)
山形大学法政論業 40
Pages: 1-32
山形大学紀要(社会科学) 36・2
Pages: 25-46
110004473702