Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
収集した文献の講読、研究会での報告等を通じ、以下のような研究成果を得た。本研究の対象である主張共通の原則(相手方の援用しない自己に不利益な事実の陳述であっても裁判の基礎となるという原則)は、日本の学説上通説のように捉えられ、また判例もこれを前提としていると考えられる。当該原則は、その外延が必ずしも明確ではないが、(1)一方当事者の自己に不利益な陳述を相手方が争わない場合には当該陳述がそのまま裁判の基礎になる、(2)一方当事者の自己に不利益な陳述を相手方が争った場合には証拠調べがなされ、その結果明らかとなった事実が裁判の基礎となる、という二つの準則から成り立つ原則であると整理することができる。しかし、この原則は、その根拠が明確でないという問題点がある。主張共通の原期の根拠としては、(1)弁論主義第1テーゼ、(2)当事者の弁論権が挙げられているが、(1)は当事者の主張しない事実は裁判の基礎にしないという原則にすぎず当事者が主張した場合に関する主張共通の原則の根拠となりえない、(2)は自己に不利益な事実についての弁論権を認める根拠が不明確である、という問題点がそれぞれある。したがって、現在主張共通の原則の説得力ある根拠はない。特に、上記(2)の準則については、実務で本当に採用されているのか疑問であることが裁判官に対するヒアリングで明らかになった他、日本民事訴訟法の母法であるドイツにおいては、(2)の準期は採用されておらず、一方当事者の自己に不利益な陳述を相手方が争った場合には、有理性を欠く者が敗訴する、という扱いが採用されている。これに照らすと、上記(2)の準則はこれを採用する積極的論拠を欠く(主張共通の原則の相対化)。訴訟物を枠としそ捕らえる現在の日本民事訴訟法の考え方を前提とすれば、一方当事者の自己に不利益な陳述を相手方が争った場合には主張責任の原則により処理するという処理が最も妥当と考えられる。
All 2008 2006 2005
All Journal Article (4 results) Book (3 results)
ジュリスト 1349号
Pages: 50-58
私法判例リマークス 36号
Pages: 114-117
私法判例リマークス 33号
Pages: 142-142
法学教室 299号
Pages: 132-133