Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
平成19年度の主な研究対象は社会保障と税制の関係である。政府も「税と社会保障の一体改革」を標榜しているように、社会保障と税制の双方を一体的に分析することは、今後の制度改革の指針において重要である。平成19年度には、税制との関連を重視しつつ、社会保障制度として特に公的年金、児童手当、生活保護について研究をおこなった。児童手当については、子どもの数が異質な家計を想定した世代重複の一般均衡モデルを利用し、シミュレーション分析を行った。出生率が内生化されたモデルにおいては、賦課方式の公的年金の存在が少子化を生み出す。研究では、児童手当の最適水準を導出した。また、家計のタイプによって最適な児童手当の水準が異なることも示した。一方、生活保護制度については、所得税住民税制との関係において、生活保護基準と課税最低限を比較し、それらが労働供給に与える影響を限界税率という形で抽出した。現在の制度においては、生活保護基準が課税最低限を超えており、ボーダーライン層の労働供給に対して負の誘因をもたらしている可能性を示唆した。また、別の論文では、近年のわが国では計測されていない負の所得税の導入費用を、独自のマイクロ・シミュレーション・モデルによって推計した。さらに、税制と公的年金がもたらす世代間の受益と負担を計測した。1960年生まれ以前の世代は生涯の負担が受益よりも低く、逆に1960年生まれ以降の世代は負担が受益を超えている。税制よりもむしろ社会保障に世代間の不公平が横たわっていることを示した上で、社会保障財源を捻出するための税制改革としては、所得課税よりも消費課税が優れていることを、ライフサイクルからみた限界税率などの指標によって示した。以上の研究は、今後の「税と社会保障の一体改革」を考える上で、重要な示唆を与えてくれていると考えられる。
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会計検査研究 第37巻
Pages: 13-28
40015969791
季刊社会保障研究 第43巻第4号(近刊)
40015946393
経済政策ジャーナル 第5巻第2号(近刊)
生活経済学研究 第26巻
Pages: 31-43
110006436953
経済論集(東洋大学) 第33巻第1号
Pages: 71-91
会計検査研究 第35号
Pages: 51-69
40015398355
現代社会研究 第3号(未定)
40015444507
生活経済学研究 第24巻
Pages: 15-24
110006272880
年金改革の経済分析 : 数量モデルによる評価(府川哲夫・加藤和久編著)
Pages: 147-172
会計検査研究 33号
Pages: 11-29
40007193275
Government Auditing Review 13
Pages: 17-34
http://www8.plala.or.jp/uemura/