Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究の目的は、エイジフリー社会の実現に向けて、企業の人的資源管理に求められる視点を検討することにある。そのために、従来企業での雇用継続と他社への転職による雇用継続の両方に焦点を当て、平成17年度から19年度にかけて定性・定量の両面から調査研究を行った。高年齢者を、「年金などの社会保障を受けて生活する社会的弱者」として画一的にみなす年齢差別、いわゆるエイジズムは、社会の発展とともに整備された社会保障給付が、職業人生からの引退と連動することにその起源を見出すことができる。当初は社会様式でしがなかった退職慣行が制度化し、高年齢者を「社会の依存者」と見なす差別意識が人々の心の中で強調されていった。しかし歴史的に見て、こうした高年齢者観はここ1世紀の間に作り出された一時代の社会的位相にすぎない。エイジズムを打ち砕くひとつの方法は、より多くの人々が高年齢期においても企業から必要とされ続ける人材となり、職業労働に励む生産的な姿を実社会に示していくことである。そうした能力が獲得されていくプロセスを、定年到達者のキャリア分析によって考察した結果、従来企業での雇用継続者と転職成功者のキャリア特性が極めて近似していることが明らかとなった。一般的には両者は求められる人材像が異なると考えられてきたが、ともに同一職能内に長く留まる「キャリアの連続性」と、能力の伸長を促す「起伏のあるキャリア」を経験している場合が多い。また定量分析によって、この長期の同一職能内経験と能力の伸長を意図した計画的キャリア育成は、長期的視点に基づく、安定的な雇用関係を土台とする人的資源管理の下で達成されていることが確かめられた。高年齢者雇用拡大に向けた企業のマネジメントの仕組みを探る工程は、とりもなおさず、企業の全体に係わる有用な人的資源管理のプロセスを知ることに他ならない。65歳になってもいて欲しいと思えるような人材を育成し活用できる企業は、聞違いなく、持続的な発展ができる企業であろう。年齢差別のないエイジフリー社会の実現に向けて、法整備や社会全体の雇用システムの再構築が求められているが、キャリア管理がある程度企業の裁量に委ねられている以上、企業が担うべき役割は大きいと考えられる。
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『叢書働くということ(全8巻)』(ミネルヴァ書房、第8巻第2部第7章) 第8巻(所収)(近刊)
高齢者の就労促進に関する研究報告書(労働政策研究・研修機構報告書、第2章) (所収)(近刊)
組織科学 第41巻第2号
Pages: 42-56
Reforms of Economic Institutions and Pubic Attitudes in Japan and Germany
Pages: 161-185
高齢者継続雇用に向けた人事労務管理の現状と課題(労働政策研究・研修機構報告書) No.83
Pages: 91-107
高齢者の雇用継続の実態に関する調査研究報告書(独立行政法人 労働政策研究・研修機構)
敬愛大学研究論集 第70号
110006487619
季刊 家計経済研究 第70号
日本労働社会学会年報 第16号
130007941700
エイジフリー研究会報告書(財団法人 社会経済生産性本部編)
年金時代(社会保険研究所刊) No.511
一橋大学社会学研究科博士学位取得論文
りそなーれ(りそな総合研究所刊) 第3巻 第9号
高齢社会統計要覧(独立行政法人 高齢・障害者雇用支援機構編) 2005年版
組織科学、審査中