Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
老齢ザルのセットシフト障害の行動上の特徴とその神経基盤の解明のために、昨年度訓練途中であった老齢ザル1頭(22歳)に学習・記憶実験を実施した。しかしこの個体が06年4月25日に死亡したため、新たに2頭の老齢ザル(22歳・27歳の訓練を開始した。しかしこの2頭は1ヶ月以上にわたる馴化および予備訓練を経験したにもかかわらず反応が安定しなかったために訓練を中止した。その後、さらに新たな老齢ザル2頭(27歳・27歳)を被験体とした。これまでの経験から老齢ザルは環境変化に脆弱であり、毎日、実験室で訓練を行うのはサルの心身に悪影響を与えかねないことがわかったため、訓練は隔日で行った。予備訓練を終えた後、見本合わせ課題の訓練を実施した。この課題においては、色・形の異なる9種類の刺激を用いた。試行開始時にはこのうちの1つが見本刺激として呈示された。サルがこれに触れると、選択刺激として(1)見本刺激と色・形ともに同じ、(2)(3)見本刺激と色・形ともに異なる刺激(2種類)が呈示された。このうち刺激(1)をサルが選択することを正反応とした。2頭とも特定の色(橙色)の選択刺激へ強く固執し、通常の訓練方法では正答率はチャンスレベルを超えることがなかった。そのため、選択刺激を3種類から2種類に減らした。見本刺激が橙色の場合は選択刺激の数以外にこれまでと変更はなかった。見本刺激が橙色以外の場合、誤選択刺激として、「色は橙色以外で、かつ色も形も見本刺激と異なる刺激」を呈示することとした。その結果、サルの反応を維持しつつ、他の色の刺激への反応を引き出すことに成功し、正答率も向上の傾向を示した。しかし、隔日の訓練であったのに加え、もともと反応が不安定で実験を中断せざるを得ない日がたびたびあったために、訓練を完了することはできなかった。