Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
開発援助の分野を中心として、実務経験者による大学教育のあり方について検討した。この分野の大学教育には、開発援助において実践力を有する実務家を育成するということが求められる。一方、大学で教育にあたる大学教員は実践力や実務経験に欠ける場合が多いため、実務経験者を大学教育の現場に登用するケースが増えてきている。しかし、実務経験者を大学に登用する場合、いくつかの問題がある。一つは、これら実務家が学術的なバックグランドを有しないことに起因する、教育の質の確保の問題である。もう一つの問題は、実務家を登用することのメリットが実務家自らの実地経験に基づく教育である一方で、この実地経験の陳腐化が早いことである。一点目の課題については、学部生の教育を中心とした大学では、実務家には実地経験を話してもらえれば十分である、と割り切っている場合が多い。一方、研究型大学では、開発援助機関のリサーチ部門の人材を登用するなど、教員に分析的視点を求める例が見られる。二点目の課題については、実務家教員を任期付き、あるいは、非常勤で採用する方法が採られている。開発援助に携わる実務家にとっても大学で教育活動を行ったことは実績となるため、このような雇用条件は必ずしもマイナスではない。さらに大学によっては、これら実務家教員をアカデミックの教員と区別して、"professor of practice"という称号のもとに雇用するケースがある。特別の制度を設けることで、教員の採用や評価の基準を実務家向けに設定することができる。以上は実務家教員をうまく活用するための工夫である。しかし、大学教育において実務と学術をつなげる切り札とまではいっていない。大学教育において実践性を有する人材の育成が求められる21世紀において、更なる試行錯誤が大学に求められている。
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