Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本年度は、わが国の大学・大学院における教師教育カリキュラムの研究課題を明らかにした上で、生活・教育実践力育成を目指す教師教育カリキュラムの理論モデルに基づいて、家庭科教育・家政教育に焦点を当てた授業の実践・検証を行った。米国の教師教育およびカリキュラム研究に関する専門学会に参加することによって、世界的な視野で日本の大学・大学院における教師教育カリキュラムの研究課題を捉えることができた。米国においては、全米レベルでは専門学会、州レベルでは中核的な大学・大学院の主導のもと、教育委員会や現場教師とも協同して、教師教育のスタンダードが開発され、教師に求められる能力基準を提示しようとしている。また、教師教育スタンダードを参考にしながら、各州の大学・大学院において独自の教師教育カリキュラムが開発されており、専門分野別の認証評価により、定期的に改善され、質的保証が行われている。一方、わが国では、教育職員免許法に規定されたカリキュラムであり、教員養成系の大学・大学院には、全国どこも同様の授業科目が置かれている。認証評価も実施されつつあるが、地域の特色ある取り組みを活かすならば、まずは、大学・大学院の教師教育カリキュラム開発にも柔軟性と多様性が認められるべきであろう。このような状況の中、わが国の大学・大学院における教師教育カリキュラムの研究課題として、理論と実践の乖離を克服する必要性が示唆された。生活・教育実践力育成を目指す教師教育カリキュラムは、子どもに生活実践力を育むことができる教師の教育実践力養成を志向するものである。そのため、自己と他者とのかかわりを重視し、家庭・学校・社会の側面から人間の生について考え、日常生活の行為実践へつなげていこうとする家庭科教育に注目した。家庭科教師を養成する大学・大学院の家政教育カリキュラムは、子どもが日常生活で直面する生活実践課題の解決に取り組めるように導くとともに、教師を志す学生が将来的に学校現場で直面する教育実践課題を解決する力を身につけることができるように工夫されなければならない。そこで、教員養成大学において、以下の点に配慮した授業を試行した。(1)日米の小・中・高等学校の家庭科教科書と授業実践の検討(2)KJ法による人類的課題の把握と班毎のプレゼンテーション(3)日本と外国の食文化の紹介と調理実習(3)班活動による指導案の作成と模擬授業(4)指導案改善のためのディスカッション(学習者の視点と教師の視点からそれぞれ何を学んだか)(5)本授業全体を通して身についた能力についての自己評価。最後の授業後の自由記述をみると、コミュニケーション能力と批判的思考力が高まったと判断できる学生が多かった。
All 2008 2007 2006
All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Book (4 results)
日本家庭科教育学会誌 第51巻第2号(掲載決定)
110007969943
三重大学教育学部附属教育実践総合センター紀要 第28号
Pages: 71-76
120001164767