競合する電子相を有するハロゲン架橋金属錯体の光誘起電子スピン共鳴法による研究
Project/Area Number |
17740191
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Condensed matter physics I
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田中 久暁 名古屋大学, 大学院工学研究科, 助手 (50362273)
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Project Period (FY) |
2005 – 2006
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2006)
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Budget Amount *help |
¥3,500,000 (Direct Cost: ¥3,500,000)
Fiscal Year 2006: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2005: ¥2,300,000 (Direct Cost: ¥2,300,000)
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Keywords | ハロゲン架僑金属錯体 / 電荷密度波(CDW) / モットハバード電子相 / ソリトン / 相転移 / スピンダイナミクス / 光誘起電子スピン共鳴 / ハロゲン架橋金属錯体 / スピン密度波(SDW) / ポーラロン / 光伝導 |
Research Abstract |
擬一次元ハロゲン架橋金属錯体(MX、MMX鎖)を電子スピン共鳴(ESR)法、光誘起ESR(LESR)法により研究した。MMX鎖として、高温の金属相(Pt^<2.5+>)と低温の絶縁的な交互電荷分極相(ACP相:Pt^<2+>-Pt^<3+>-Pt-Pt^2+)の間で逐次相転移を示すPt_2(n-pentylCS_2)_4Iを取り上げた。ACP相は非磁性だが、温度上昇に伴いスピン(Pt^<3+>;S=1/2)が熱励起される。高温相と低温相におけるESR信号の角度依存性を測定し、相転移に伴うスピンダイナミクスの変化を観測した。高温相では擬一次元金属に特有な磁気双極子相互作用のsecular項のみを反映した線幅の変化を観測した。他方、低温相では線幅は超微細構造を反映した角度依存性を示し、更にスピンの運動による尖鋭化が観測された。この結果から、熱励起されたスピンが理論的に予測されていたソリトンであることが明らかになった。 一方、ACP相ではソリトンが光生成されることが前年度のLESR測定により示唆された。本年度は更に、LESR信号の時間応答特性や温度依存性を測定し、ソリトンの再結合過程を研究した。LESR信号は低温で数分の寿命を持つ正成分と、ほぼ減衰を示さない負成分の重ね合わせである。ソリトン(正成分)の信号強度は2分子再結合に特有な照射光強度依存性を示した。また、2分子再結合はLESR信号強度の減衰曲線の解析からも示された。再結合定数の温度依存性から、ソリトンの伝播機構が10Kで低温のトンネル過程から高温の熱活性ホッピング過程へ変化することが分かった。熱活性領域における活性化エネルギーは従来報告されているMX鎖や導電性高分子に比べて一桁以上小さく、MMX鎖ではソリトンの非局在性が強いことが示唆された。 MX鎖に関しては、長鎖アルキル基を側鎖に持つ臭素架橋パラジウム錯体のESR測定を行った。この錯体はアルキル基のファスナー効果により電子相の競合が制御され、電荷密度波(CDW)相とモットハバード(MH)相の間で相転移を起こすことが、光学測定やX線構造解析から示唆されていた。ESR測定により低温の磁性的なMH相と高温の非磁性的なCDW相の相転移を明確に示すことに成功した。
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Report
(2 results)
Research Products
(10 results)