Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
植物には、2種類の光合成反応中心、Photosystem I(PSI)とPhotosystem IIが働いている。PSI反応中心は、アンテナ色素として100分子ほどのクロロフィルa分子を含んでおり、この大量のアンテナクロロフィルによる巨大な吸収スペクトルが邪魔をして、未だに光吸収直後の電子移動反応については明らかになっていない。我々は、フェムト秒からナノ秒に至る広い時間スケール、広いスペクトル範囲で時間分解蛍光の測定を行うことで、PSIにおける光吸収直後のエネルギー移動・電子移動ダイナミクスを研究した。前年度までに構築したフェムトーナノ秒時間分解蛍光測定装置により測定を行った。その結果、従来より時間分解能の遅いピコ秒蛍光測定で報告されている1.5psという時定数より一桁も速い0.17psという非常に高速の蛍光減衰、立ち上がり過程を見出した。従来の報告では、1.5psの時定数で初期光誘起電荷分離が起こっているとの光反応に基づいて実験結果が解釈されている。従来モデルの枠組み内で我々の実験結果を解釈した場合には、これまでの推定よりも一桁速い0.17ps初期電荷分離が起こっているという結論に至る。これは、これまでに報告されているどの電子移動反応よりも速い時定数であり、本当にこれが初期電荷分離過程の時定数と解釈してよいのか、慎重に考察する必要がある。0.17psの過程は、PSI内の高速のエネルギー移動過程であり、より遅い6.9psの蛍光減衰過程を初期電荷分離とした新たな反応モデルに基づいて、現在実験結果の解析を行っている。
All 2006
All Journal Article (5 results)
J. Phys. Chem. B 110
Pages: 1114-1120
J. Mol. Biol. 363
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