Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
乳酸を導入したナフタレン基質を用いて一重項酸素との反応によって生成する光学活性ヒドロペルオキシドの生成機構を検討するため以下の実験を行った。一重項酸素がナフタレンのジアステレオ面を区別して付加しエンドペルオキシドになった後、カルボン酸によってエンドペルオキシドが開裂してヒドロペルオキシドに変換される。そのエンドペルオキシドの開裂の律速過程を特定するため低温NMR測定を行い、反応速度解析を行った。メトキシナフタレンのエンドペルオキシドを発生させ、そこに低温下でカルボン酸やアルコールを添加して、経時変化を追跡したところ擬一次式にしたがってエンドペルオキシドの減衰とヒドロペルオキシドの生成とが観測できた。そこから算出した擬一次反応速度定数は反応試薬濃度に比例しており、二次速度定数を求めることができた。反応試薬の酸性度を高くすると、反応速度定数が増大する傾向がみられた。したがって、エンドペルオキシドへのプロトン化か開裂反応の律速段階に含まれていることがわかった。次に、カルボン酸付加の段階の立体選択性について検討した。エンドペルオキシドは分子内の乳酸によって置換反応を受け、環状アシラール構造を有するヒドロペルオキシドへと変換される。カルボン酸が会合していない状態で反応を行うと、その置換反応は立体保持で進行している。それに対して乳酸部分と外部から添加したカルボン酸とが会合できる条件にすると、立体反転を伴って環状アシラールが形成された。カルボン酸が立体保持で導入された後、S_N2反転によって立体反転した環状アシラールが形成されている可能性が高い。またその選択性は添加するカルボン酸の構造と相関しており、乳酸部と外部カルボン酸とがアシラール形成の競争していることがわかった。
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