Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
今年度は、プラズマ中における各成分(電子、イオン、中性高速粒子など)のプラズマ製膜における寄与を評価する上で最も重要と思われる電子線について実験を行った。超高真空チャンバー内で10Kに冷却した金基板上にメタンを極微量ずつ堆積させながら同時に電子線(100eV、1μAcm^<-2>)を照射し、メタン換算で約0.1μmの試料薄膜を堆積させ、照射終了後に顕微ラマン分光を用いてダイヤモンド薄膜の生成の可否を検討した。基板には目視で確認できる程度の着色が見られ、膜成分が存在することが確認できたが、ラマンスペクトルからはダイヤモンド薄膜の生成は確認できなかった。この理由として、生成したダイヤモンドの膜厚がラマン分光の検出限界以下であった、もしくは、ダイヤモンドが生成していない、等の理由が考えられる。現在、原料ガスをエタンやエチレンといった炭化水素に変えて実験を行っている。本研究課題に関連して、宇宙における星間塵上での化学進化のシミュレーション実験として、メタンと水との混合薄膜への電子線照射実験を行っている。その結果、メタノールやホルムアルデヒドといった複雑な分子が生成することが実証されているが、その際、エタンやエチレンといったダイヤモンド膜生成の前駆体と考えられる化合物が同時に生成していることが分かった。これは、電子線衝撃における炭化水素のポリマー化が起こることを示唆しており、ダイヤモンド薄膜生成の可能性を裏付けるものと考えられる。