Budget Amount *help |
¥3,300,000 (Direct Cost: ¥3,300,000)
Fiscal Year 2006: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2005: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,600,000)
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Research Abstract |
水素環境で使用される金属材料は,長時間高圧水素に曝されることにより水素を吸蔵し,疲労強度が低下することが懸念されている.また,水素環境は比較的高速のき裂進展領域において,疲労き裂進展速度を加速させることが報告されているが,実機の設計上重要である□K_<th>近傍における疲労き裂進展挙動に及ぼす水素ガス環境の影響は充分明らかではない. 本研究では水素ガス環境中でCT試験片を用いた疲労き裂進展試験において,とくに疲労き裂進展下限界近傍の疲労き裂進展挙動に着目した.試験片には陰極チャージ法を用いて水素チャージを行った.その際,チャージ温度を室温より高くし,より大量の水素が試験片内部にまで侵入するようにした. 供試材は水素利用機器材料として最も有望なもの一つであるSUS316Lを用いた.比較用に,もっとも一般的なSUS304も実験に用いた.疲労き裂進展挙動は□K漸減法により求めた.その際,き裂閉口条件と水素の影響を関連づけた検討を行うために,(1)応力比R=0.1一定と(2)P_<max>を一定にしながらK_<min>を増加させてΔKを漸減させるワーストケースの荷重負荷条件で実験を行った.き裂長さ計測は背面ゲージ法により行った.試験周波数は28Hzとした.1×10^<-11>m/cycle以下のき裂進展速度をもって□K_<th>と判断した. SUS316LのR=0.1について,水素ガス環境中の疲労き裂進展速度はΔK_<th>近傍において大気中と比較してやや遅い傾向を示した.水素ガス中のΔK_<th>は大気中よりも高い値となった.これらの結果は,低合金鋼などの水素チャージ材の大気中疲労試験で得た微小疲労き裂進展挙動やオーステナイト系ステンレス鋼の低圧水素ガス中の比較的高速の疲労き裂進展領域でのき裂進展挙動の傾向とは異なっており,全K値領域で材料内水素,環境中水素の影響を総合的に検討する必要がある.水素ガス中と大気中のき裂進展挙動の差違は,き裂閉口挙動を考慮することで消失した.試験中にき裂閉口を生じないワーストケースでは,両環境のき裂進展挙動はΔKによる整理で一致し,上のことを裏付ける結果となった.以上から,水素ガス環境中でき裂進展挙動が受ける影響は,水素環境がき裂閉口挙動に変化をもたらすため生じることが明らかになった.疲労破面観察では,水素チャージ材の水素環境中試験について,本実験では比較的高いΔK値領域で,大気中にはみられないファセットが観察された. SUS304においては,水素ガス環境中のき裂進展挙動に大気中との差は顕著ではなく,SUS316Lでみられた水素ガス環境中のき裂進展速度低減の効果はみられなかった.
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