Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
我々の研究グループはこれまでに、線虫C.エレガンスの体の大きさが感覚情報とその下流で働くcGMP依存性タンパク質キナーゼEGL-4によって制御されていることを報告している。昨年度(17年度)は新たに単離した変異体の解析からグアニル酸シクラーゼGCY-12がEGL-4の活性を制御している可能性を示唆する結果を得た。gcy-12変異体では、egl-4同様に感覚情報に依存した体のサイズの減少が起きない。また、gcy-12遺伝子の過剰発現によって、egl-4変異体とは逆の表現型である、体のサイズ減少、産卵の活性化が起こる。さらに、二重変異体の解析からも、この二つの遺伝子が同じ経路で働いていることが示唆された。本年度(18年度)はgcy-12遺伝子の性質について、詳しい解析を行った。(1)グアニル酸シクラーゼGCY-12は、リガンド結合領域と考えられる比較的大きな細胞外領域と膜貫通領域、細胞内の酵素活性領域からなる。GCY-12の活性がその細胞外領域を介して何らかの外部からのシグナルによって制御を受けているのかを調べるため、細胞外領域をコードする配列を欠失したgcy-12遺伝子を作製した。その結果、このような欠損型gcy-12遺伝子でもgcy-12変異体に導入すれば、正常な体のサイズ制御を回復させることが分かった。(2)正常な体のサイズ制御に必要なgcy-12遺伝子の発現場所を調べたところ、egl-4同様に複数の感覚神経での発現が重要であることが明らかになった。(3)線虫にはgcy-12以外にも、感覚神経で働く複数のグアニル酸シクラーゼ、例えばdaf-11やodr-1、の存在が知られている。これらの遺伝子とgcy-12遺伝子の使い分けについて調べるために、二重変異体を作製して解析を行った。その結果、daf-11には全く体のサイズ制御に異常がないことが分かった。一方、odr-1とgcy-12との二重変異体は、gcy-12変異体と較べて体のサイズ制御の異常の度合いが大きくなることから、odr-1遺伝子も体のサイズ制御において、少なくとも部分的な役割を担っていることが示唆された。