Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
ATF6は小胞体膜に1回貫通したII型膜タンパク質として発現している膜結合性転写因子であり、高等動物の小胞体ストレス応答において中心的な役割を果たすと考えられている。高次構造の異常なタンパク質が小胞体に蓄積すると(小胞体ストレス)、ATF6は小胞体から出芽して小胞輸送によりゴルジ体へ移行し、ゴルジ体に局在しているプロテアーゼによるプロセシングを受ける。その結果、転写因子としての機能を有するATF6の細胞質側領域が膜から遊離して核へ移行し、標的遺伝子の転写を誘導する。このようにATF6の活性化プロセスの全体像は明らかになりつつあるが、ATF6が異常タンパク質の蓄積を感知してゴルジ体へ小胞輸送される分子基盤については良くわかっていない。本研究では、ATF6の小胞体内腔ドメインに進化的に保存された2つのシステインが存在することに着目し、以下の結果を得た。(1)通常、ATF6は内腔ドメインの2つのシステインで分子間あるいは分子内ジスルフィド結合を形成し、酸化型ATF6として存在している。(2)小胞体ストレス下ではジスルフィド結合が解離し、還元型ATF6が産生される。(3)小胞体ストレス下の細胞を分画すると、還元型のATF6のみがゴルジ体画分から検出される。(3)の結果は、還元型ATF6のみが小胞体からゴルジ体へ輸送されることを強く示唆している。以上のことから、ATF6が異常タンパク質の蓄積を感知してゴルジ体へ輸送されるプロセスには、ATF6の酸化還元が極めて重要な役割を果たすと考えられた。
All 2007
All Journal Article (1 results)
Molecular and Cellular Biology Vol.27・No.3
Pages: 1027-1043