Research Abstract |
福岡都市圏近郊に位置する福岡演習林御手洗水試験流域(ヒノキ人工林)において大気からの窒素化合物の沈着量や渓流からの流出量を計測した.平成18年度は,大気中の窒素化合物(NO_2,HNO_3,HNO_2,NH_3,NO_<3->,NH_<4+>)の測定を行い,森林への乾性沈着物の寄与について検討するとともに,林外雨,林内雨,樹幹流,渓流水中に含まれる無機態窒素濃度(硝酸態+アンモニア態)の測定を継続調査した. 大気中NO_2,HNO_3,HNO_2,NH_3,NO_<3->,NH_<4+>の年間平均濃度は,それぞれ16.4,2.0,0.6,0.9,2.7μgm^<-3>であり,国内外の都市近郊域において報告されている値とほぼ同程度であった.このことから,乾性沈着による寄与が都市近郊林である本試験流域において無視できないことが分かった.林外雨による無機態窒素沈着量は,約12kgNha^<-1>yr^<-1>と見積もられ,林内雨+樹幹流による無機態窒素沈着量(約13kgNha^<-1>yr^<-1>)とほぼ同程度であった.このことは,乾性沈着量が少ないのではなく,窒素化合物が乾性沈着した後,枝葉面が雨水に濡れる際に,全沈着量(湿性+乾性)の一部分が枝葉によって吸収されているためと考えられた.林外雨,林内雨+樹幹流ともに無機態窒素沈着量は渓流からの窒素流出を引き起こすとされる年間沈着量の10kgNha^<-1>yr^<-1>を超えており,高い値を示した.渓流水中の無機態窒素の平均濃度は,64μmolL^<-1>であり,国内外の山地小流域における観測値と比較して高い値を示した.この原因の一つとして,大気からの無機態窒素沈着量が多いことが挙げられた.また,無機態窒素流出量は,約11kgNha^<->yr^<-1>と見積もられ,林内雨や樹幹流として供給される無機態窒素が土壌中においてはほとんど保持されていない可能性が考えられた. 以上のことから,都市圏近郊に位置する本試験流域は,都市域から排出される汚染物質の影響を受けて窒素沈着量が増加しており,さらに本試験流域が土壌中における窒素保持能が低いために渓流水中の無機態窒素濃度が高いことが分かった.
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