Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
前年度までに、生体膜局在性及び血液脳関門透過性を有するmethoxycarbonyl-PROXYLがリポソーム膜濃度依存的に油相成分への分配比が増加し、リノール酸由来の脂質ラジカルと反応することをin vitroにおいて明らかにしている。また、脳虚血再灌流マウスにおいて虚血1時間+再灌流1時間をほどこした場合、油相成分由来のニトロキシルラジカルのシグナル減衰が亢進することが明らかとなった。このことは、再灌流1時間において、脂質ラジカルが生成していることを示唆している。しかしながら、水相成分におけるラジカル生成の有無が明らかでない為、分離解析が正しく行えているのか否かが不明であった。本年度は、脳虚血再灌流マウスにおける生体内ROS生成場の分離解析を行うために、再灌流6時間後におけるフリーラジカル反応の解析を行った。その結果、水相性分におけるmethoxycarbonyl-PROXYLのフリーラジカル反応は、シャム群と比較して、脳虚血再灌流群で低下していることが明らかとなった。そこで、脳虚血半球と半体側を摘出し、ニトロキシルラジカルの還元に関与することが報告されている、ミトコンドリア電子伝達系酵素群、アスコルビン酸、及びチオール濃度の測定を行った。その結果、ミトコンドリア電子伝達系酵素群酵素活性の有意な低下が認められた。これらの結果から、再灌流6時間後の脳実質細胞では、スピンプローブであるニトロキシルラジカルに対し酸化ではなく、還元反応が強く影響したものと推測される。このタイミングにおいては、油相成分でのラジカル反応の亢進は、認められなかった。よって、脳虚血再灌流の時間軸にそって、レドックス反応の場は変化していることが、水相・油相のフリーラジカル反応を同時に分離解析ことによって明らかとなった。