Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
これまでの研究において、薬物トランスポータ発現量と腎薬物排泄能との相関関係から外れる患者が存在した。この理由について、トランスポータの活性制御機構が想定される。本年度は腎尿細管側底膜において有機イオンや薬物の輸送に深く関与している、有機アニオントランスポータの活性調節機構について検討した。これまで尿細管側底膜のアニオン輸送にはCl-が活性調節因子として働くことが示されていた。一方、血中のCl-濃度は腎疾患時に変動することがある。そこでCl-のhOAT1及びhOAT3輸送活性に及ぼす影響について検討した。hOAT1及びhOAT3は多様な基質認識特性を示すが、本研究においていずれの基質においてもCl-濃度依存的に活性が上昇した。更に詳細に検討するため速度論的解析を行ったところ、hOAT1では最大輸送速度が変化しているのに対して、hOAT3では基質への親和性が変動していることが示された。次にCl-の細胞内及び細胞外濃度を変化させて検討した。細胞内及び細胞外Cl-の濃度を平衡状態にした場合と細胞外Cl-濃度のみを変動させた場合のいずれにおいてもCl-による輸送活性の制御に違いは認められなかった。これらの結果よりCl-はhOAT1やhOAT3によって輸送されるのではなく、活性調節因子として働くことが示唆された。更にhOAT1やhOAT3は細胞内のαケトグルタル酸と細胞外基質との交換輸送体であると考えられている。そこでCl-濃度による細胞内αケトグルタル酸濃度について検討した。しかし、細胞外Cl-濃度を変化させても細胞内αケトグルタル酸濃度に変化は認められず、Cl-による活性変動には細胞内αケトグルタル酸は関与しないことが示唆された。本研究成果は生体内での有機アニオントランスポータの活性変動機構を解明するための重要な基礎情報である。
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All Journal Article (5 results)
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Am J Physiol Renal Physiol (印刷中)
Biochem Pharmacol (印刷中)