Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
細胞外及び細胞内の浸透圧変化に対応して自らの容積を一定に保とうとする働きは、動物細胞が生命を維持する上で必要不可欠な機能であるが、最近ではこの容積調節の破綻が細胞死につながることが明らかとなっており、細胞がいかに自らの容積をセンスし対応するかという点に注目が集まっている。細胞が一旦膨張した状態から元の体積に戻る調節性容積減少(regulatory volume decrease : RVD)の過程は、細胞内の蛋白質による情報伝達を介して、最終的には細胞内からのK^+とCl^-流出が駆動力となって細胞内の水が細胞外に流出することによって達成される。特にこの場合のCl^-の通り道であるチャネルは細胞の容積上昇を感知して開口するために容積感受性Cl^-チャネル(VSOR)と名づけられているが、最近では正常浸透圧下でアポトーシス誘導剤やH_2O_2によってVSORが活性化されることによって、細胞の持続性収縮が起こることが明らかとなり、容積調節だけでなくアポトーシスにも深く関わっていることがわかってきている。VSORの分子同定を目指す過程で、報告者は、VSORの調節蛋白質としてATP-binding cassette(ABC)蛋白質スーパーファミリーに属するABCF2を同定しているが、平成18年度はABCF2とその結合蛋白質であるアクチニン4(アクチン結合蛋白質)の相互作用を、siRNAを用いて生化学的に詳細に行った(投稿中)。また、報告者はABCF2のアクチニン4に対する結合領域が、ABCF2の分子内結合によってマスクされていることも見出しており、それによって本領域が不必要に露出しないように調節されている可能性を考えて生化学的な検討をおこなった。