Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
癌抑制因子p53の発現レベルは通常非常に低く保たれているが、DNA損傷などのストレス刺激や癌遺伝子の活性化などにより安定化され転写調節因子として標的遺伝子の発現を誘導し、細胞周期の停止、DNA修復、アポトーシスの誘導を行うことが知られている。私は、マイクロアレイ法により、p53依存的に抗癌剤アドリアマイシンにより発現誘導される遺伝子群18種類を単離した。そのうちクローン#130はCullin3を中心とする複合体型E3ユビキチンリガーゼの新規サブユニットで、分解する標的タンパクを認識する機能を持つことを見出した。これまでに、p53の誘導因子でユビキチンリガーゼとして機能する蛋白質は、MDM2やPirh2などが知られている。これらの蛋白質は、p53の誘導因子でありながら、p53をユビキチン化し分解を促進させ、フィードバック抑制機構によってp53の蛋白質の量を調節するのに働いている。一方、#130は、p53自身の分解には関与しておらず、別の標的蛋白質の分解に関与していると考えられた。そこで、yeast two-hybrid法により130の基質の同定を行った。その結果、#130に結合する蛋白質#130BP-1を単離した。これまでに、過剰発現系で、#130BP-1は#130に結合し、ユビキチン化され分解されることを明らかにした。また、#130-BP1は中心体に局在し、分裂期キナーゼAurora-Aと結合することを見出した。更に、in vitro kinaseアッセイ法により#130-BP1はAurora-Aのキナーゼ活性を上昇させ、また、同時に#130を過剰発現させるとAurora-Aのキナーゼ活性を抑制することを見出した。また、HeLa細胞を、double thymidine blockによりG1/S期に同調させて、細胞周期再開と同時に#130をアデノウイルス発現系を用いて高発現させると、コントロールに比べてM期の遅延が起こった。以上のことから、通常#130-BP1は分裂期に中心体に存在し、Aurora-Aの機能を補佐する役割をしているが、DNA損傷時には、p53依存的に#130の発現が誘導され、#130-BP1をプロテアソーム分解経路により分解しAurora-Aを不活性化することによりG2期から分裂期への進行を抑制するのではないかと考えた。今後、更に#130の機能を詳細に解析し、p53による分裂期制御の解析を行う予定である。