Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
凍結保存したヒト前立腺組織から、マイクロダイセクション法を用いて辺縁領域の腺上皮細胞からタンパク質の抽出を行った。このタンパク質を免疫原としてマウスに免疫し、辺縁領域腺上皮細胞特異的モノクローナル抗体の作成を試みた。計5回の抗体作成を行い、全部で953コロニーが得られ、うち811クローンについてスクリーニングが可能であった。スクリーニングは、ホルマリン固定された前立腺組織切片を使用した免疫染色法により、顕微鏡下で判定を行った。811クローン中582クローン(71.8%)に陽性所見が得られたが、辺縁領域の腺上皮細胞に特異的に陽性となるクローンは得られなかった。但し、辺縁領域に優位に陽性となる興味深いクローンが5クローン得られた。さらにこれらの5クローンは、Cytochrome P450ファミリーの1つであるCYP1B1に対する抗体(ME001; Alpha Diagnostic杜)と同様の染色態度を示している事が明らかとなった。CYP1B1は前立腺では移行領域に比べて辺縁領域で高発現しているという報告があり、今回作成した抗体はCYP1B1に対する抗体であることが予想された。そこで、抗体の認識する抗原タンパク質を同定するために、凍結保存しておいたハイブリドーマを大量培養し、培養上清の濃縮・精製を行ったのち、ハイブリドーマの産生する抗体の免疫グロブリンのアイソタイプを同定した(IgG1,κ)。次に、精製した抗体と組織抽出タンパク質との免疫沈降を行い、抗体の認識する蛋白のみを分離、SDS-PAGEで可視化し、さらにウエスタンブロッティング法で非特異的な反応でないことを確認した。SDS-PAGEのバンドを切り出し、質量分析法を用いて抗体の認識する抗原タンパク質の同定を行ったが、アルブミンという解析結果であり、アルブミンとの交差反応をみていた可能性が示唆された。