Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
薬物中毒死の剖検所見はごく一部の薬物を除いて特徴的な所見に乏しく、病死との鑑別が困難な場合も多い事から、ともすれば見逃してしまうという危険に常にさらされている。この原因としては、急性薬物中毒時における生体の変化や病態に関する研究の不足がある。そこで我々は、組織の病態変化を網羅的に捉える事ができるプロテオミクス技術の中毒学への応用を考案した。昨年度は心臓毒性の強い抗マラリア薬クロロキン(CQ)をモデル薬物とし、その心臓における侵襲変化をヘマトキシリン・エオジン染色、マッソン三重染色及び免疫組織染色によって確認した。その結果に基づき、本年度は急性CQ中毒時における心臓組織タンパクの変化についてプロテオミクス技術を用いて検索する事を計画した。なお、網羅的な検索を予定していたが、プロテオミクス研究の専門家からの助言に従って、近年薬物による心臓侵襲のマーカーとして注目されているタンパクとして心筋トロポニンTについて特に着目して検討を行った。ラット(雄性、250g)にペントバルビタール40mg/kgを腹腔内投与して麻酔し、足根部伏在静脈にカニュレーションを行って保定した。前採血を行った後にCQ550mg/kgを経口投与し、経時的に約0.5mlずつ採血した。各血液試料は4℃下にて10,000×gで10分間遠心分離して血漿成分を分取し、-80℃下にて保存した。次いで、各試料についてSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を行い、ウェスタンブロッティングを行って心筋トロポニンTの出現の有無を確認した。その結果、投与前に認められなかった心筋トロポニンTが投与後の時間経過に伴って出現している事が確認された。このことから、CQ急性中毒時においてもCQによる心筋毒性の結果として心筋トロポニンTが血中に遊離する事が示された。
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