Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
東京都監察医務院の行政解剖例のうち、遺族より同意が得られた心臓突然死86例(虚血性心疾患41例、致死性不整脈22例、心肥大12例、心筋症4例、その他7例)および対照群として心臓性突然死以外の死亡57例について、頸部リンパ節よりDNAを抽出した。アンギオテンシン変換酵素(ACE)遺伝子のintron 16の287塩基対の挿入/欠失(I/D)多型および血管内皮一酸化窒素合成酵素(eNOS)遺伝子の5'-franking regionのT^<-786>C(T/C)多型およびexon 7のGlu298Asp (G/T)多型を解析した。ACE遺伝子のI/D多型はPCR増幅産物の長さから、eNOS遺伝子はPCR-RFLP法を用い、各々変異部位を含むPCR増幅産物のNae IおよびBan IIのdigestにより判定した。得られた各群間の遺伝子多型の出現頻度についてχ^2検定を行った。また、致死性不整脈が疑われた22例については、QT延長症候群の原因遺伝子の1つであるKLVQT1遺伝子のすべてのExon領域のシーケンス解析を行った。冠動脈疾患とACE遺伝子多型は日本人を対象とした幾つかの報告では有意差の有無について一致した見解は得られておらず、また、本態性高血圧とは関連が無いとする報告もある。また、eNOS遺伝子はT^<-786>CのCアリルおよびGlu298AspのTアリルがcoronary spasmの相対危険率が大きいとされ、Glu298Aspは日本人では急性心筋梗塞や本態性高血圧の遺伝的risk factorの一つといわれている。しかし、今回の解剖事例を対象とした調査においては、これらの各遺伝子多型の出現頻度は、各群間において有意な差が認められなかった。KLVQT1遺伝子ではExon 1、9、12、15に点突然変異がみられたものが10例存在した。このうちExon 9、15の変異はアミノ酸配列の変化を伴うことから、QT延長症候群に関連した変異の可能性があると考えられた。