Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
今回我々はすでに繊維化が進んでいる病巣に、細胞外基質分解酵素であるMMP1遺伝子を腎間質に導入することで、腎繊維化巣の改善が認められるかどうかの検討を行った。6週齢SD雄ラットに片側尿管結紮を施行して進行性腎線維化モデルを作成し、結紮術後10日後にMMP1遺伝子をHVJ-liposomeに封入して結紮側尿管の口側から逆行性経尿管的に導入した。遺伝子導入効果の判定のため、MMP1遺伝子にはtagをfusionさせた。同時に比較検討のため、tagを付けたLacZ cDNAを導入する群を作成する。遺伝子導入後、4日目に屠殺し、摘出した腎臓の組織学的検討およびウェスタンブロッティングから、遺伝子が通常の10倍程度に導入、発現されたことを確認した。αSMA抗体と導入遺伝子の抗体との二重染色から、腎間質に遺伝子導入されたことを確認した。次にマッソントリクロム染色およびH-E染色により各群の遺伝子導入による組織形態、線維化の変化を評価したところ、MMP1導入群で組織学的に腎繊維化の改善傾向は見られたがスコアリングによる定量化およびコラーゲン染色の定量化では有意差は見られなかった。しかしながら尿中ヒドロキシプロリン、PICPの含有量およびウェスタンブロッティング、RT-PCR法によるコラーゲン、ファイブロネクチンなど各種線維化マーカーの発現の変動を比較検討したところ、MMP1導入群において有意にコラーゲン発現が低下していた。以上の結果から、MMP1遺伝子を腎繊維化巣に導入することは病巣の進行を抑え、沈着した繊維化巣の治療につながりうる可能性が示唆された。さらに今回新規糖蛋白ポドカンのコラーゲン結合部位がLRR2〜3に存在することがコラーゲン結合法から示され、この部位とMMP1遺伝子との融合遺伝子をsubcloningにて作成した。現在、この融合遺伝子を腎繊維芽細胞に過剰発現させ機能解析中である。この検討が終わり次第、作成した融合遺伝子を上記の方法でラット腎繊維化巣に導入し検討する予定である。