Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究では、HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)の多面的効果の背景にある動脈硬化の分子病態を解明するため、コンディショナル遺伝子ターゲティングの手法を用いて肝臓、膵β細胞、血管内皮、単球/マクロファージにおいてそれぞれ臓器特異的にHMG-CoA還元酵素を欠損する遺伝子改変マウスを作成・解析することを目指した。昨年度は、ES細胞を用いたジーン・ターゲティングの手法によりHMG-CoA還元酵素遺伝子の標的部位にloxP配列を挿入したマウス(floxed animal)を作成。Floxed animalには明らかな異常はなく、妊孕能にも異常を認めなかった。Cre発現アデノウイルスの投与によりCre-loxPシステムがデザインどおり機能することを確認した。Cre発現アデノウイルスの投与実験では、主に肝細胞におけるHMG-CoA還元酵素の失活を呈するが、その結果高度の肝障害をきたした。今年度は、このマウスを、臓器特異的プロモーター下にCreレコンビナーゼを発現するCreトランスジェニックマウス(Cre-Tg)と交配させ、特定臓器でのみHMG-CoA還元酵素を欠損するマウスの作成・解析を進めた。Cre-Tgとしてはまず、アルブミンおよびラットインスリン各遺伝子のプロモーターを、それぞれ肝細胞、膵β細胞特異的プロモーターとして使用したマウスを用いた。肝特異的欠損マウスでは、重度の肝障害を呈し、致死的であった。膵β細胞特異的欠損マウスにおいては、耐糖能異常の有無を現在検討中である。今後、血管内皮特異的欠損マウスおよびマクロファージ特異的欠損マウスの作成を進める。