Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
骨髄造血幹細胞に発現し、ES細胞由来のヘマンジオブラストでは発現していない遺伝子群には、造血幹細胞の自己複製、分化抑制、または骨髄へのホーミングに必須な分子が含まれていると推察される。これまでにES細胞から分化誘導したヘマンジオブラスト細胞集団(Flk1+/SCL+)と骨髄造血幹細胞(Lin-/Sca-1+/CD34-)との間の遺伝子発現をRDA法により比較し、後者でのみ発現する遺伝子群を独自に同定した。これらの遺伝子群のうち、機能未知分子であるC1に焦点を絞って造血幹細胞の発生と機能維持に必須な遺伝子であるかを検討してきた。予備的検討において、siRNAノックダウンシステムを用いたC1遺伝子の発現抑制により、骨髄造血前駆細胞のin vitro増殖が抑制され、さらに造血に関与する複数の遺伝子のmRNA発現が一様に低下した。したがって、C1は転写制御因子の上流で作用し、遺伝子発現を制御する転写因子が結合していると思われた。そこで、下流で制御される遺伝子群のプロモーター領域やDNA結合配列等の検索を進めている。また、興味深いことに、我々の研究室で同様の方法でクローニングした機能未知分子S76遺伝子のmRNA発現も、C1遺伝子の発現抑制により有意に抑制されたことから、C1はS76の上流で機能している可能性が示唆された。S76遺伝子は主に骨髄造血幹細胞で発現しており、ノックアウトマウスの解析も進んでいることから、現在、C1遺伝子との関係を中心に骨髄造血幹細胞での機能を検討している。