Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
ターゲットトレーサーであるF-18標識フルオロ酢酸エチル(EFA)は、ethyl O-mesyl-glycolateを出発原料とし、カセット型FDG専用合成装置を用いて、高度な化学的・工学的知識なしに簡便に無菌製剤を製造ことに成功した。得られたF-18標識EEAは、生理食塩水中では不安定であるがエタノール溶液中では6時間後でも安定であった。霊長類のコモンマーモセットを用いた体内動態実験では、F-18標識EFAの血中未変化体量を酢酸エチル抽出法により測定した。その結果、未変化体は投与1分後で35%、2分後で1%であることを確認した。さらにその代謝物をRadio-TLC法により定性分析したところ、血中に存在する放射能はF-18標識フルオロ酢酸(FA)であることを確認した。これまでに、Brain Uptake Index実験およびPETイメージング実験で、F-18標識EFAはF-18標識FA-に比べ脳移行性が高いことを確認しているが、エステル体での脳への集積は短時間で行われたと考えられた。さらに、ラット脳で速やかに脱エステル化が起こることを確認しているため、投与直後はエステル体として血流に依存した挙動を示し、その後速やかに代謝され脳内でFAとして存在すると考えられた。これらの結果より、F-18標識EFAはF-18標識FAのプロドラッグとして脳内酢酸代謝イメージングに利用できるだけでなく、これまでにほとんど報告のないF-18標識体の血流診断薬剤としての性質をも有していることが強く示唆された。