Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
胎生19日のWister Ratの大腿骨滑車部に特注ナイフで150μmの軟骨半層欠損を作製した。経時的に観察すると、手術後1日目でサフラニンOの染色性低下が全関節軟骨に亘って生じた。この染色性低下は脛骨関節軟骨にも生じた。2日目にも染色性低下は残存していたが損傷周囲で軟骨細胞の増殖が始まった。3日目には損傷周囲の細胞密度は明らかに増加し、一部の細胞は損傷部へ移動していた。染色性の低下は残存していた。これ以降の胎児の生存率は著しく低下したが、軟骨損傷を加えない対象群でも同様であったことから、麻酔および手術による影響と考えた。また、損傷を加えていない股関節軟骨は染色性の低下などを認めなかったことから、手術の影響は膝関節にとどまっていた。生後10日では、損傷部は残存しておらず、顕微鏡観察下において細胞密度やサフラニンO染色性低下は見られなかった。損傷を加えた膝関節は非損傷側膝よりもわずかに小さい傾向が見られたが、標本数が少なく統計学的解析はできなかった。損傷軟骨からRNAを抽出してRP-PCRを行ったところ、手術後1時間でc-fosの発現が増加し、損傷6時間後まで増加続け、損傷後12時間で基準値に復帰した。In situ hybridizationによって発現部位を調べたところ、損傷周辺細胞がc-fos陽性細胞であった。成獣ラットにも同様にして軟骨半層欠損を作製した。手術後1日でサフラニンOの染色性が低下したことは同じであったが、欠損周囲の細胞はむしろ減少し、手術後12週でも欠損軟骨が修復されることはなかった。c-fosの発現も検出されなかった。実験手技の再現性を調べる目的で家兎でも同じ手術と観察を行ったが、家兎では明らかな軟骨修復は確認できなかった。ただし、胎生期の手術は生存率がラットよりもさらに低下したため、胎生期のc-fos発現については不明であった。