Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
アレルギー性鼻炎において、T細胞、特にTh2細胞が重要な役割を示す。そこで、可及的に短時間の培養で直接抗原特異的T細胞の検出ができるような新たな検査法を検討し、樹状細胞を体外で誘導し、タンパクレベルの抗原をプロセッシングさせ、抗原提示させる方法を確立。ハウスダストダニアレルギー性鼻炎患者におけるダニ抗原特異的IL-4・IL-5・IL-10産生メモリーT細胞について、ELISPOT法を用いて検討してきた。ハウスダストダニアレルギー性鼻炎患者群では、感作のみされ発症していない無症状者群や3年以上特異的免疫療法を継続し症状がほとんどない著効患者群に比べ、抗原特異的IL-4・IL-5産生メモリーTh2細胞が多く、アレルギー性鼻炎の発症に抗原特異的メモリーTh2細胞が関与していることや、特異的免疫療法の作用機序のひとつとして抗原特異的メモリーTh2細胞の減少があることを昨年報告した。今年度は、同様の方法を用い、スギ花粉症患者とスギ花粉に感作されていない健常者における、2006年のスギ花粉飛散シーズン前後のスギ抗原(Cryj)特異的メモリーT細胞の変化について検討した。スギ花粉症患者では、シーズン前後でCryj特異的IL4-1・IL-5産生メモリーTh2細胞の有意な増加が見られたが、感作されていない患者ではCryj特異的メモリーTh2細胞の増加は見られなかった。しかし、Cryj特異的IL-10産生メモリーTr細胞について検討すると、健常者においてシーズン前後で有意な増加が見られたが、スギ花粉症患者では有意な増加が見られなかった。健常者では、抗原特異的Th2細胞とTr細胞の間に有意な正の相関が見られ、抗原暴露によりTh2細胞が増殖しようとしても、同時に覧細胞が増殖することによって制御されている可能性が示唆された。また、スギ花粉症患者ではこのような相関が見られず、Tr細胞の制御から逸脱しTh2細胞が増殖することが、花粉症の感作と発症に大きく関与している可能性が示唆された。