Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
研究の目的現在の超高齢化社会において、噛めること、すなわち咀嚼機能がクオリティーオブライフを維持するために重要である。高齢者の咀嚼機能の維持には、全身的骨粗鬆症の咀嚼器官、つまり顎関節、歯槽骨への影響を正確に把握することが不可欠である。そこで本研究では、ヒトに近い実験動物サルを用い、骨粗鬆症における顎関節動態を、咀嚼によって生じる機械的応力も加味して総合的に検討することとした。研究結果1)サル下顎頭における咀嚼運動想定時の応力分布について下顎頭のCT三次元再構築画像に関節円板と関節窩を構築し、5Nの力で、咀嚼運動を想定した下顎前方運動時の三次元有限要素解析を行った。この結果、前方皮質骨において応力の集中が認められることが明らかとなった。2)2次元微細骨構造の検索昨年度microCTを用いて三次元構造を解析した下顎頭の内、右側は骨染色を施した後、MMA樹脂に包埋し、横断切片を作成した。左側については10%EDTAにて脱灰し、パラフィンに包埋し、右側と同様に横断切片を作成し、HE染色を施した。それぞれの切片について骨微細構造を検索した。その結果、Sham群(コントロール群)は厚い皮質骨でほぼ均一に覆われているにもかかわらず、OVX群(実験群)は後方の皮質骨が非常に薄くなり、明瞭な連続性が失われていた。海綿骨においては、Sham群では密で板状の海綿骨が認められたが、OVX群では非常に粗な棒状の骨梁構造であった。骨形態計測結果も海綿骨解析において、BV/TV、Tb.Thはsham群が有意に高い値を示し、OVX群はSham群と比較して骨量減少と骨梁構造の脆弱化を呈していた。また、皮質骨解析では後方領域は有意に皮質骨の厚みの減少が認められた。まとめ咀嚼による機械的応力により、下顎骨、特に皮質骨において骨粗鬆症による骨量減少が抑制されている事が明らかとなった。