Research Abstract |
研究目的: 本研究の目的は,脳卒中急性期にあり,かつ内科的治療を受ける高齢患者のせん妄発症に対する看護師の臨床予測(Clinical Forethought)の構造を明らかにすることである.本研究では,「臨床予測」の操作的定義を「ある臨床診断,あるいは状態増の異変や転帰に対する予見の総称」とした. 18年度の進捗状況:S市内の脳神経外科専門病院に勤務する看護師5名に研究参加同意を得て,インタビュを行った.また,遂語録を作成し,分析を進めている. 結果と考察: <対象者の属性>S市内の脳神経外科専門病院または脳神経外科病棟を有する施設,計3施設に勤務する20名の看護師にインタビューを行い,准看護師1名を除く19名を分析対象者とした.19名(女性17名/89.5%,男性2名/10.5%)の平均年齢は29.0±7.34歳であった.看護師の経験年数は平均6.94±6.64年で,そのうち脳神経外科での看護経験年数は,平均5.11±4.12年であった.看護師の経験年数3年未満は7名(36.8%),3年以上5年未満が5名(26.3%),5年以上7年未満が3名(15.8%),7年以上が4名(21.1%)であった.看護の最終学歴は,12名(63.2%)が専門学校,3名(15.8%)が4年制大学,そして,短期大学,進学コースの卒業がそれぞれ2名(10.5%)であった<看護師経験年数7年以上の看護師のせん妄発症に対する臨床予測>看護師経験年数7年4名(全員女性,平均年齢40.8歳,脳神経外科看護の平均経験年数9.3年)の臨床予測に基づく観察項目は,「脳梗塞の悪化」,「脳梗塞による障害」,「安全・安楽な入院生活」に関連する事柄に大別された.また,観察項目の中で最も注目しているものは「意識の低下」などの脳梗塞の主症状であった.「環境今の不適応」「精神的動揺」などのせん妄発症への注目度は高くなかった.せん妄発症を察知知るために着目している事柄は,患者特性「高齢」,「認知症がある」などで,発症を示す患者の変化「目つき」,「仕草」,「ADLの手順」などであった.これらの観察の体得に影響したものに「全員が「自己の経験」を挙げ,他は「文献」,「他の看護師の経験」を加えた.以上より,急性期の臨床予測は脳梗塞の症状が中心であった.また,せん妄発症を察知するために様々な着目点を経験的に体得しているが,せん妄の知識体系においての不足が示唆された. 今後はさらに分析を進め,経験年数による臨床予測の差異を検討する.
|