「研究の目的」 重度・重複障害児の拡大代替コミュニケーション機器として、視線入力装置が、脊髄性筋萎縮症や筋ジストロフィー及び脳性麻痺の児童生徒に適合されてきている。視線入力装置の使用方法として、カーソルを動かして対象とするアイコン等の位置を示す「ポインティング操作」とマウスの左クリックに該当する「確定操作」について、両方とも視線入力で行う、または、視線入力で「ポインティング操作」を行い「確定操作」をボタン型スイッチ等で行うという2つの方法が考えられる。 そこで、障害種ならびに運動機能が異なる生徒を対象に、同一のシューティングゲームを使用し、その際の複数回測定による安定性を基準とし、入力方法を変更し、適合の判断の可能性を探ることを試みた。 「研究方法」 対象生徒は、以下の3名である。生徒A : 高等部3年男子(脳性麻痺)、生徒B : 中学部3年男子(自閉症スペクトラム障害)、生徒C : 高等部1年男子(デュシャンヌ型筋ジストロフィー症)。 使用したアプリケーションは、EyeMot 2D(伊藤2016)の射的ゲームを用いた。設定は、的を1秒間注視すると落ちる標準の設定で実施した。なお、的は1ゲーム当たり10個提示される。この10個が落ちるまでの時間を計測した。 「結果」 生徒Aは、3つのフェーズで評価を行った。最初の『視線入力』の平均は47秒、『視線入力+スイッチ』の平均は57.3秒、最後の『視線入力』の平均は44秒であった。『視線入力+スイッチ』の条件では、スイッチを押す時に頭部が動くことがあったため時間を必要とした。生徒Aは、頭部のポジショニングが重要であり、スイッチを併用する時には通常時の座位姿勢よりも大きく車椅子等をチルトして、頭部の安定する姿勢について検討を深める必要があった。生徒B並びに生徒Cは、すでにマウスの操作性が良好のため、マウスを用いた操作方法が効率的であった。
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