Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は, 小学校理科物理分野についての授業評価・改善に役立てるために, できるだけ簡便かつ平易に実施できる多肢選択方式の標準的な概念調査問題を開発することを目指して, 力と運動に関する20問の問題を作成し, 小学校2校第6学年児童192名, 中学校1校第2学年生徒152名, 同第3学年生徒136名を対象に調査を実施した。そのうち10問は「てこの規則性」, 10問は他の内容から出題した。特に, 「てこの規則性」の授業を担当した第6学年3学級においては, プレテストーポストテストとして調査を行い, 規格化ゲイン(Hake, 1998)を用いて授業評価・改善の指標としたほか, 問題間の相関等の分析を行ったが, 定量的な評価を十分行うことができなかった。 そこで, 平成29年度は, 一部問題を差し替え, 「振り子の運動」の問題を10問追加し, 30問の調査問題とした。そして, 小学校1校第6学年児童94名, 中学校1校第1学年生徒145名, 同第2学年生徒147名, 2校第3学年生徒218名, 高等学校1校第2学年生徒313名を対象に調査を行った。「てこの規則性」の授業を担当した2学級では, プレテストーポストテストとして調査し, 第6学年2学級のポストテスト, 中学校第2学年, 高等学校第2学年の各正答率の相互比較を行った。そして, 第6学年児童計94名の調査結果を, 項目反応理論を用いて分析した。ここでは, 被験者能力をθ, 項目困難度をβ_iとし, 正答確率がp_j(θ)=1/1+exp{-Da(θ-β_i)}と表される1パラメータロジスティックモデル(定数D=a=1)を用いた。 項目特性曲線を描くと, 項目特性図では, 定性的にしか捉えられなかった難易度を定量的に捉えられた。また, うち1問がこのモデルに適合するかしないかぎりぎりのところに位置づいており, 標準化のために同問題を修正, もしくは, 差し替えを検討する必要があることが分かった。今後の課題として, 同一問題で行った, すべての児童・生徒917名の調査結果について再度分析・評価していきたいと考えている。
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